2009年9月28日月曜日

Guild F112 12弦 ブリッジはがれ トップ浮き 腹ボテ 修理 


今回はGuild F112 12弦ギターの修理です。

このギターはOOO程の小ぶりなボディで深い胴の、ころんとした愛嬌のあるすごくかわいいギターです。
深胴の物は生産期間も短く希少です。
ネックは12本の弦張力に耐えるよう2本のトラスロッドが入っています。
かっこいい!!

ビンテージならではの味わいあり、傷も少なく再生が楽しみです。

現状は弦の引っ張りに耐えられず、トップ浮き、ブリッジが剥がれて
きています。

ブリッジ剥がれはすごく多い修理です。
原因は弦の引っ張りにブリッジの接着が絶えられない訳ですが、
根本の原因は、トップ浮きにあることが多いです。






トップ板は縦目のやわらかい薄い板で、簡単にたわみます。
ブリッジは横目の硬い曲がらない材で作られています。

内部の骨組みの強度が足りなければ、弦に引っ張られると
トップ板は簡単にたわみます。
しかしブリッジは曲がらず、たわみを保持しようとします。

でも、ブリッジは接着剤で付いているだけです。
長年引っ張られ続ければ、はしっこから少しずつはがれて
きて当然です。

1部のギターはこのはがれ自体をより強固にするため
ボルトナットで固定しているものもあります。
Gibson J45などブリッジに丸い貝の埋め込んだもの
ありますよね。

あの下には実はボルトが入っていてトップとつないでいます。

確かに丈夫でめくれ上がってしまうことはないですが、
それでもブレージング強度不足の物は端からはがれてきます。
ブリッジがボルト部だけついて浮き上がっている45の修理もよくあります。

強度不足の個体は、何度張り直してもまた剥がれてきます。
何度も何度もはりなおし修理されているギターもよく見かけます。

さて、根本の強度不足から修理することにします。

長年にわたり引っ張られ膨らんだトップ板は、浮き上がったまま癖がつき弦を外しても
膨らんだままです。
まずこいつをフラットに戻さないとだめです。
むりに押さえこむと簡単に割れてしまいます。
そのため内部から曲がった部分にだけ湿度と熱を与え、木が楽に伸びるように
してやる必要があります。
木と話しながら無理せず、ゆっくり時間かけて伸ばします。

せっかくのビンテージ、からからに乾いた材料から出る音が魅力なのに!
湿度与えて大丈夫?ってご心配の方も多いでしょう。

でも大丈夫。木の仕事して25年。ありとあらゆる木の加工しています。
独自の特殊技法、理論も木から学んできました。
木の持つ特質も心得ているつもりです。





ブリッジも剥がし、トップ板もピンとまっすぐ伸びました。
guildさんも肩こりがほぐれたように生き生きです。














                             

貼り付け準備をします。

前に付いている接着剤を剥ぎ取ります。
そして、木も荒らしていきます。
荒らしていく理由は、小さな凹凸を付けることで
そこにボンド食い込ませるのと、接着面積を大きくするのと、
新しい木肌にしてボンドを吸い込ませるためです。
















ブリッジも削りまっすぐに仕立て、同時に接着材剥ぎ取ります。



















ブリッジの裏面にノミで傷つけていきます。
この画像は違うブリッジですが、こんな要領です。

これも傷の中にボンドが食い込み、接着面積が広くなり
より強固に接着できるからです。











このGuildさんは低音側の浮きが大きく、
膨らみかたもいびつだったので、
こんなブレージングを追加しました。

片側太く、だんだん細くなったブレージング
です。
この個体にはこのような3本が必要でした。


適所に貼り付けます。





ブリッジを貼り付けます。

ボンド入れるまえにトップの裏からマスキングテープで
穴ふさぎします。

これやっとかないと中にボンドが垂れ、厄介です。
















ブリッジ貼り付けクランピング接着。
2,3日乾ききるまで寝かします。

修理完了です。

後は全体調整。
12弦ギターの場合どこまで弦高下げれるかで
使いよさ決まります。

この手のギターを打ちたたく様な弾き方しないでしょうし
普通にピッキングしてびびらない限界まで下げました。

2本のトラスロッドはすごく有効に使えます。
さすが名機!!


弦高 1弦12F 1mm まで仕立てあがり、楽チンに押さえられます。
ラルフタウナーのように、12弦リードソロも可能なレベルに仕上がりました。

トップも浮き上がり過ぎず、良い具合の強度追加できて 上出来!上出来!!

んでもって これは素晴らしい音です。
よく乾いた材のビンテージ音。深胴で作られるなんとも言えぬ深い音。
マホガニーの明るい音と12弦が絶妙!

すんばらしい!すんばらしい!
近々音源アップしますね。

修理終わって、ご満悦で試し弾きしてると、お手伝いしてくれてるSさんが
音聴きつけ、まるまると目を見開いて一言

「これ、ボクに譲って下さい。おっおっお願いしますっ。」

土下座せんばかりの勢いに押され、誰の目に触れることもなく
奪い取られてしまいました。

俺だって 俺だって 欲しかったのに!!

2009年9月10日木曜日

Martin LX リトル マーチン トップ 浮き ふくらみ 修理



今回は Little Martin LXM トップ浮き修理 です。

マーチンの新素材シリーズのトラベルギターです。
かわいいです。

トップ板すごく薄く、指で押すと簡単にへこみます。

リトルマーチン3台目のトップ浮き修理です。


困っているかた非常に多いのではないでしょうか?










この個体は、まだ全然新しいのですが、すっかり変形して

弦を張っていないのに

ブリッジ下5mm程膨らみ、サウンドホール周りもへこんでいます。

慢性化して癖がついてしまっていました。












その上、弦を張ってみるとサイド板もトップに引っ張られ

バック側が外れてしまっています。

チューニング上げていくに従い口が大きくなり

みしみしいいます。

とてもまともにチューニングできません。

まず、バックのはがれを治しました。

外からと内側からタイとボンドをしっかり押し込み
クランピング接着し、余分をきれいに拭き取って
2日寝かします。




今回は写真のような3本のブレージング追加しました。

当たり前ですが、ブレージングの質量、材質、形は
その個体ごとに考えます。
個体ごとに変形場所、ブレージングパタン違い
当然必要な追加強度変わってくる訳ですから。

できるだけ小さいもので強度保たせる方法を考え、
必要な場所を見定めて貼り付けます。

横の木と板はスカッと綺麗に張るための治具(ジグ)です。






              
                                     

無事に手術終了です。
チューニング時で2mm程の浮きに治まりました。

トップ浮き修理           
フレットすり合わせ
全体調整(オクターブピッチ調整、弦高下げ、など)

¥10000くらいです。

トップ浮き修理の概念として私はこのように考えます。

トップがひどく浮いているギターは、
音的には、
言わばパンパンに皮張った太鼓みたいなもので、
音の立ち上がりは良いが
振動が小さくすぐに減衰してしまう。
低音のおおきな振動がなく、うねりが出にくい。
あるいは、振動が小さいため鳴らずぽこぽこの音に
なってしまう。




機能的には、
弦高高くテンション強く操作性悪い。
オクターブピッチ合わず音痴になる、
チューニング安定しない。などのほか
ブリッジ、ブレージングのはがれ、トップ板、バック板、サイド板の割れを引き起こし
楽器として機能しなくなる、致命的な障害が出る原因になっています。

うまく治してやると(この うまく はすごく重要です)
多くのトラブルが解消され、安心した長い付き合いができるギターになります。

今まで30台ほどのトップ浮き治してきましたが、それぞれのギターに教えられることばかりです。
正直、強度重視して大きなブレージング貼り付けて鳴り悪くなり、サウンドホールから
手入れて削りなおし調整していく大変な作業もありました。

業界では不治の病と言われているトップ浮きですから、並みの努力では難しいのはわかっています。
でも、それが原因で打ち捨てられてるギターがいっぱいあります。
そんな奴らにまた歌わせてやりたいです。
また愛着もって大事にされる存在にしてやりたいです。



今回の修理後のリトルマーチンの音源アップしました。
音はぽこぽこから深い音になりいいギターになりました。

演奏は親友で、ギターの師匠でもあるHAIsanです。
はいさん HP  

録音は写真にあるSONYボイスレコーダ。
結構使える相棒です。

横にあるbox.netをクリックして聴いてみてください。 (Martin LXM ongen)

リトルマーチンの音とは思えんようないい音しているでしょ!
トップ浮き修理済みで安心!  傷なし!
弦高1弦12F 1.5mm めっちゃ弾きやすい!!

かわいい厚手のオリジナルギグバック付き!

ただいま工房にて販売中      ¥33600   Sold! さいたまのT様 ありがとうございました。

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