2010年5月28日金曜日

Guild JF55-12 1995 トップ浮き ブリッジ剥がれ オーバーサイズブリッジ制作 ネック元起き

こんにちは。 北川木工です。

今回は劇的な変身をとげたGuild JF55-12 1995 の修理記録です。

ご依頼は1本のメールから始まりました。

北川木工 殿
突然のメールで失礼申し上げます。
神奈川oo市在住のooと申します。
御社のホームページ、ブログを大変楽しく拝見させていただいております。
私はアコースティックギターを弾き始めてすでに40年以上となり、
まだまだ学生時代のバンド仲間を集めては懐かしいアメリカンフォークを
楽しんでおりますが、このたび御社のギター修理に大変興味を惹かれまして
是非ご相談を!と思いメールを差し上げました。
私はマーチン、ギブソン他数台のギターを所持しておりますが、その中の
ギルド(JF-55、95年頃)の12弦についてのご相談です。
このギルドは「12弦といえばギルド、ギルドといえば12弦!」との憧れをもって
永年愛用しておりますが、ブリッジ剥がれを繰り返しております。
トップもハッキリわかるほど膨らんでおり、弦高を下げるためサドルは
限界まで下げております。
いままで何箇所かのリペアーショップに出しておりますが(4回目)いまだにサドルが
剥がれます。
先月も最後の頼みと思って、有名な某リペアーショップに出しましたが「トップの膨らみ
は治せず、ネックリセットで対応するしかない。ブリッジの剥がれはボルトで固定する。」
とのことでした。
ネック起きは確かに若干はありますが、ネックリセットは最後の手段として、アイロンで
治れば思っております。またブリッジをボルトで固定してもはトップの膨らみを
治さないと弾きにくさや音量の改善にはつながらないのでは?と思います。
それに、なんといっても修理価格が20万近く(これで完璧に治ればいいのですが・・)
もう少し他の方法は・・・と考えております。
(ブリッジの再接着だけお願いしてで帰ってきましたが、もう端のほうは
剥がれてるようで・・・)
北川様のブログにありましたギルドF112と全く同じ状態ですが「膨らみを抑える
為にブレーシングを追加する」というのは非常に興味をそそられました。
(木と付き合って25年!と言うのも感心いたしました)
是非一度診ていただきたいと思っておりますが、最終的には総合調整という
形になるんでしょうが、トップ浮き修理、ネックアイロン、ブリッジ再接着、フレット
すり合わせ等でおおよそいくら位の価格となるでしょうか?
(特に修理費にこだわっているわけではないのですが・・・)
また修理に出す場合、順番は何日くらいお待ちすればよいのでしょうか?
(前は1年以上待ちましたが・・・)
突然のメールで大変ぶしつけではありますが、宜しくお願い申し上げます。


コピペさせていただきました。


これから何本かメールのやり取りをして送られてきました。



ものすごく美しい個体です。
本当に大切に可愛がられてきたやつだと感じました。












左右均等に膨らみ具合調べて弦緩めて6.5mmの浮きがあります。
表面板は変形癖がついています。

ちょっと特殊な加工でぴしっとまっすぐに伸ばしてやる必要があります。

弦高はチューニングして、1弦12F2.9mm
12弦でこの弦高では、私には弾けません。










ブリッジも剥がれかけています。
トップ浮きの歪みに耐えられず何度も剥がれて修理された跡があります。
美しい個体だけにその傷が痛々しいです。

その上、弦高下げるためにブリッジが削られています。
お世辞にも上手い削り修理とは言えません。
エボニーブリッジくすみ、仕上げでこぼこで可哀想です。





まず始めに、ネックの元起き修理からスタートです。

何度も書いていますがこれが効くかどうかで修理内容が完全に変わります。

私どもの工房ではネックアイロン修理に1週間ほどかけます。

それくらいかけないと判断出来ないからです。

料金は1回目5000円成功報酬です。

この個体は2度の矯正(料金8000円)でいい感じに寝てくれました。
さてさて、かなりのモノに上がりそうです。
ワクワクします。



















アイロン成功したので、ブリッジは薄い必要はなく、ブリッジ回りの傷痛々しく薄く削られ醜い状態だったので、オーナーと相談しエボニーでオーバーサイズブリッジを作りました。
どっしりと良い音になるはずです。
オリジナルにこだわら無ければ(もう削られてオリジナルではなくなっていますが)剥がれ傷塗装修理する手間考えれば、音にも見栄えもこちらのほうが得策です。


もちろんブリッジ裏はプライヤリング加工して接着面積を大きくし接着剤の食いつきを良くします。






この個体の膨らみにはこの2本のブレージングを追加しました。

結果トップ浮きは左右で3mm程に治まり、サウンドホール回りのヘコミも解消されました。

後は念入りに最終調整。

修理後弦高は1弦12F1.3mm
これなら気持ちよくいつまででも弾いていられます。





修理内容とご請求額 (12弦の場合6弦よりも高くなる加工があります。)

ネック元起きアイロン修正2回         8000
表面板伸ばし癖取り加工            5000
ブレージング追加2本              8000
12弦ブリッジ制作                12000
ブリッジ剥がし貼付け              8000
サドル制作                    4000
フレットすり合わせ(ステンレス)        6500
全体調整(オクターブ、弦高下げ一式)   7000
 
                      計  ¥58500


すばらしい鳴りに変わりました。
さすがに12弦はギルドと言われる音!

音源アップします。
演奏はバンドメンツのスーさん。
僕も横で邪魔してしまっています。まっ ご愛嬌。ゆるひて。

ほんでもって、こんなに嬉しいメール頂きました。ぶひひっ!


北川 様
ギルド到着しました、感激の一言です!!
イヤ~最高の仕上がりですね~。
重厚な新しいブリッジ、元起きやトップのふくらみがないと言うことは
こんなに弾きやすいものか!
それに加えて低音部の腹に響いた鳴り!そして全体のギルドらしい
カーンとした音! まさに求めていた音がよみがえりました!
本当にありがとうございました。
また、今まで色々なギターをあちこちのリペアーショップに出しておりますが
北川様の丁寧な仕上げに驚いております。
今まで完成して返ってきたギターが汚いまんまや、あちこちキズだらけだったり
したものが結構多く、これもリペアー作業上は止むを得ないのかな~?
なんて思ったりもしておりました。
本当に綺麗で感激しております。
更に安い!!!
期待どおりに直らないで10万以上なんて~のもありまして・・・
とにかく最高の状態に仕上げていただき、感謝・カンシャの気持ちで
一杯です。 
最高の愛器として、これからも更に大切に末永く弾き続けていく
つもりです。
ついでに一つ質問ですが、現在張ってあるのはマーチン弦ですよね?
普通は私はダダリオのライトを使用しているのですが、ロッドは暫らく
このままいじらないでおいてもいいでしょうか?
今後また何か判らないことがあれば是非ご相談にのっていただきたく
宜しく御願いします。
本当にありがとうございました。

へへへいっ! この仕事しててホント良かった!!

ありがとうございます。

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