2011年3月7日月曜日

サドル ナット 調整 制作 作り方

こんにちは。北川木工です。

今回は北川木工のサドル、ナットの制作方法についてレポートします。

多くの方から作り方についてご質問あります。
ギターリペア、調整の基本的でとても大切なパーツですね。

しかし、このパーツは作り手の考え方や演奏のタイプによって
セットアップの方法、方向性が違うということを知っておいて下さい。

これから記す事は、私の考え方、作り方の基本であり、レパートリーの1部です。

リペアの最終段階でサドル、ナットのセットアップ行うわけですが、ネックの状態、フレット擦り合わせなど、終えた上でのセットアップを前提とします。
写真は、いろいろなギターの制作途中の物を使うことになりますが、サドル、ナットの制作を限定にして下さい。

では、始まりはじまり

よくあるご質問にサドル、ナットどちらを先にセッティングするのか?というのがありますが、当然ながらサドルです。
ナットを先にギリギリにセッティングしてサドル高さ落とすと、ナット側でも更に弦高下がり、開放でビビる事になりますよね。
ナット溝削りがリペア、セットアップの最終になります。

サドルを作る時、私は12F1弦3mm 6弦3.5mm位からスタートします。
かなり弦高高いです。
サドルのRは元付いている物や、タスクの汎用の物で型どり、ベースとします。
後々にその個体の指板R、個体癖に合うよう加工していきます。

サドル溝幅、深さは個体によってまちまちです。仕込みの基本として、厚みが足りず弦圧で前に倒れてしまうようなモノは論外です。
市販のサドルの厚みで合えばラッキーですが、そんなことは殆ど無いです。

厚いものから削り出す事になります。
大きめ大きめでやり過ぎないのがコツです。
溝の深さ確かめ、厚いまま、溝より少し長い様に先程の弦高目安に型とり、糸鋸でカットします。
弦の乗るR部分は直角に平たいままにしておいて下さい。

ややテーパーをつけて(溝に入る方を薄く)溝に噛むようにヤスリで削り薄くしていきます。
薄い方が溝に噛んだら、ここで初めて溝の長さに丁度になる様カット、又は削り、溝端の半円に合わせてサドルの端を280番くらいのペーパーで丸めます。

この時点ではまだまだ底にまで入らないはずです。

次に溝底にまで入り込む様に厚みを削る訳ですが、薄くなりすぎない様に写真のように鉛筆で溝の縁を塗ります。

こうして縁を塗っておくとサドルの厚み、長さのキツイ部分に黒く鉛筆が付きます。












こんなふうです。
圧着の強い部分は濃く付きます。
これを320番くらいのペーパーで取っていきます。

何度か繰り返すと、うまい具合にきっちり気持よくサドルがおさまります。
しかし、まだ高さは高いので、まだ後で削る必要があります。
とりあえず収まりの練習です。
軽くペンチで引っ張って抜けるくらいの仕込みが理想です。
ピエゾ素子が下に敷いてあるエレアコはちょい緩めにします。


これでサドルを収めてチューニングしてみます。
1音下げDでチューニングします。
この時点では、まだ弦高高くサドルの出も多いので、ノーマルチューニングするとサドルを割ってしまう可能性あるのです。


こんなふうに割れます。
せっかくスカっと収まったのに割ってしまうとショックです。
しかも2枚も・・・

Martinのビンテージなどは薄いので簡単に割れてしまいます。

1音下げにしときなよ。
Martinさんが教えてくれました。




Dでチューニング出来たら、ネックをヘッド側から覗きネックの反りを確認します。
ストレート、或いは順反りならば、トラスロッドを使い時計回りに15分づつくらい締めながら軽い逆反りのネック状態を作ります。
なぜ、ここで逆反りをつくるのか?それは先でビビリチェックするときに分かります。

軽い逆反りでセット出来たら、ここで12Fの弦高を計ります。

この個体の現状の弦高は12F6弦4mm 1弦3.2mm
です。ちょっとスタート高過ぎでしたね。
まっ 低いよりましです。ご愛嬌。
これを2.8mm 2mmに持って行くにはどれくらいサドル下を削るか計算します。
1,6弦とも1.2mm落としたいので、サドルの底に当たる部分を2.4mm落とす必要があります。
実際に落としたい寸法の倍サドルを削る必要があります。





しかし、いきなり2mmまで行くのは危険です。
個体の指板のRとサドルのRが合っていないと3,4,5弦で低すぎになりビビる可能性あるので一旦3mm 2.5mmを目指し6弦側2mm 1弦側1.4mmサドルの下部分を削ります。
この削り寸法の計算を理解して下さい。

弦外してサドル抜いて、削る寸法鉛筆でけがき280番ペーパーで削っていきます。
1.4mm~2mmくらいすぐですよ。

そこまで削れたら、またブリッジに仕込みます。しかしテーパーついてるので、また少し厚く入りきらないでしょう。先程の要領で厚い部分を削り仕込みます。
収まったらチューニング。
もう一度Dチューニングで試し弾きします。
ローからハイまで強めに弾いてビビリ出る場所確認します。
Dチューニングで弦の振幅大きいので、もしビビリ出る場所あれば、何弦の何フレットか書いてチェックする必要あります。

さて次は2.8mm、2.2mmを目指して同じ事を繰り返します。


これで初めてノーマルEチューニングして試し弾きします。
スケール630mmのJ-45や000や調子良くない個体ならばこのあたりで強く弾くとビビリ出る場所が出てきます。
大概が5,4,3弦の3~7F 6弦の1,2,3Fあたりです。
開放でビビるのはナットが低いためです。
開放は後でナット制作するので放っておきます。

普通ならばビビリ出だしたらで限界とされますが、2.2mmは美味しくないないです。
この試し弾きの時に確実にびびる場所チェックしておきます。

でっ、ここでだ~!!
トラスロッドを少し緩めます。軽く逆反りにしていたのをビビリ出ない所まで戻します。

トラスロッドはこういう微調整を行うために付いているものです。
強引に回して弦高下げる為のものではない!!

で、また試し弾き。
ビビリはかなり解消されているはずです。

そしたら更に弦高下げ攻めます。
今度は底は削ったら絶対あきません。

この個体は上記試し弾き時点で5弦、4弦にビビリ出てロッド少し(5分程度)緩めて解消されました。
5,4弦の弦高は限界です。
しかし、6、3,2,1弦はまだいけます。

写真の様に6,5弦の間、4,3弦の間に印して削ります。
慎重に5,4弦は下げない様に少しずつ試し弾き、削りを繰り返し、何度も弦外したり、チューニングしたり、ロッドも触りながら攻めて行きます。





しかし、ロッド緩めて順反りにまでは戻しません。
何故なら季節や温度変化、プレイヤーのスタイルによってロッドで微調整出来る余裕を持たせておかなければならないからです。
順反りのネックで限界の弦高にしてしまうとロッド調整不可になります。

私は、こうしてその個体の限界のサドル高を作ります。

余談ですが、軽い順反りのネックが一番良いなどという常識がありますが、誰が決めたんですかね?
ローコードだけ使うならまだしも、タッピングやリード、リフ、ミドル、ハイでのカッティングなどテクニカルな奏法好む人にはミドルレンジの弦高高いのは嫌がられます。
その個体の最高の状態を追求するしかありません。


これでやっとこサドル高が決まりました。
弦の乗るRは平らなままです。
次にオクターブピッチ調整にかかります。

オクターブピッチ調整とは、開放の音と12Fの音が1オクターブ違いになるようにサドルの厚みの中で弦の長さを調整していく作業です。

先にサドルの頭が平らなままならば、弦との接点がすべてサウンドホール側にあり弦長が一番短い状態であるわけです。
その状態で各弦開放と12Fの音確かめ、12Fの音がどれだけ高いかで接点をピン側にずらしていく必要
があります。
12Fでハイなほど長い弦長が必要なのです。

これが狂っていると、高音側に行くほど音がずれ音痴のギターになります。
倍音も出ず、音が濁ります。




このように各弦のピッチポイントを印します。














個体によりポイントは全然違います。
タスクなど一般に売られているものは2弦B線だけ下げられていたりしますが、そんなもんじゃないです。
この個体はD4弦が一番長い必要がありました。

エレキを自分で調整される方などはよくお分かりですよね。








上の写真のポイントに沿って山を作って行きます。

この形はMartinの真ん中より上のクラスのサドル作り方です。

ここまで来たら全体を400、600番のペーパーで仕上げます。

お好きなかたは耐水の2000位まで行くとテラテラに光りますよ。







北川木工はこうしてサドルを作っています。
一般のサドル作り4000円 ロングサドル5000円 です。

やっぱり安すぎるような気が??
まっ 絶対要る物やしこれで行きましょう~!

ありがとうございます。

ナット作りは次回にしますです。

PS 音源アップ 
<徒然> 女性ボーカルとのユニットです。Godin モントリオール ループステーションでループ
<Woodman> 北川木工 Vo Gt スーさん Gt 楽団一人 Bass