2009年11月5日木曜日

Martin D-76 ネック 起き 腰折れ ネックアイロン トップ浮き ふくらみ 修理

今回は珍しいギターです。
Martin D-76 1976年に1976本製作されたらしいです。
D-35ベースで材料は1クラス上の42,45仕様。

イーグルのヘッドデカール、星のポジションインレイ







この個体はネックが12Fあたりから起き上がり
3.2mm程の高い弦高なのに
ハイフレット部ビビリ出ていました。
ネックがくの字に折れ曲がった感じです。
トラスロッドも無いため通常の調整では弾きやすい
セッティングにはできません。









その上トップがふくらみ(1弦側で7mm膨らみ)、弦テンション強く、
トップに振動できる余裕なく音もこもり気味で
本来の性能が十分に発揮できない状態で修理に持ち込まれました。


サドルも限界まで削り下げられています。
ブリッジから弦が出てくる角度もギリギリまで溝掘られています。
何とか弾きやすい状態にしようと、楽器屋経由で何箇所かに調整を試みられたらしいです。


さてさて、修理開始です。


まず、ネックの元起きを修理するためアイロンを使います。

ネックアイロンは熱をかけて木を暖め曲げる道具と
思われているようですが、違います。

ネックアイロンは、指板とネックを接着している接着剤を
熱で溶かし、任意にセッティングした状態で微妙に
指板をずらし、適正なネック状態にして再接着する
ための道具です。

ですから、そのセット、時間を間違うと波打ったネックが
出来上がってしまいます。

それから、使われている接着剤によって全然アイロンが効かない
場合もあります。



経験ではGibson Martin Guild クラシックギター全般などはよく効きますが、
K.yairi 最近のYamaha などでまったく効かない個体もあります。

おそらく使われた接着剤の種類によると考えられます。

したがって、当工房ではネックアイロンは成功報酬にしています。
料金は1回5000円です。
1度では曲がりきらせられないと判断した場合段階を経て2,3度かけることもあります。
それでも料金をそのまま倍々に請求したりしません。
2度で8000円、3度で9000円てな感じです。

トラスロッドが入ったギターでももちろんかかります。
ロッド締めきっても足りない様な個体に有効に発揮します。

よくアイロンは一時しのぎでまたすぐ戻るという声聞きますが、
こちらではまだそういうクレームや再依頼はありません。

アイロンをかけた後は、フレット頭のそろいが完全に狂います。
フレットが浮き上がったりするのではなく、指板の反りとセットが変わるためです。
100パーセントフレットすり合わせが必要になります。

フレットのすりあわせについても私なりの理論があります。
長い板にペーパー貼り付けたものが市販されていたりしますが
あれを使うのはどうか?と思います。
これについては、長くなるのでまた後程語ることにします。

さて、このD76は2度のアイロンで軽い逆反りにもって行けました。
くの字腰折れから軽い逆そりになると、ハイフレット部が自然に落ち
理想的なネックになります。
弦高1.5mmくらいでビビらずリードギターなどばしばし弾けるギターの
指板側面をヘッドからすかして見ると、14Fより上が下がっていってるはずです。
そんなネックが作れました。
これで弦テンションかかると逆反りがストレートになるはずです。

次はトップ浮き修理です。
このギターは1弦側が膨れ上がっていたため変形ブレージングを追加しました。
この個体にはこの2本のブレージング強化が必要でした。















ネックの角度が変わり、トップが沈むと当然ナットもサドルも
高さが足りなくなります。

新しく牛骨でサドル、ナット作り弦高、オクターブ調整して弦を張ると
1弦側3mmほどの膨らみに治まり、いい感じです。
弦高も1弦12F1.7mmくらいでビビリなく弾きやすいセッティングできました。

さて音は・・・  鈴なりがでています。ドレッドで鈴なり。
めったに聴けるものではありません。
中高音すばらしくクリアーで低音は爆発的な音でなく深い低音でよく鳴っています。
修理代金 ¥26000

大成功です。

納品後、依頼者大阪のF氏よりこんなメールいただきました。

    先日はありがとうございました。マーキスを張ってみました。
    至福の音です。

うれしいです。
ありがとうございました!!

2 件のコメント:

  1. 先日はご苦労様でした。
    このナナロク、あれからますます深い、何とも言えない音になってきています。
    一日に一回はこの音を聞かないと我慢できない。そんな、至福の音です。
    木がどうしてこういう音を生み出すのか、とても不思議です。
    とても静かに、弦にふれる程度に弾いても、ボディーの中で鈴が鳴るように音が転がっています。
    多分、時間があれば一日中このギターを鳴らしていると思います。
    魔性の音?
    言い過ぎかも知れませんが、僕にとってはそんな感じです。
    先日梅田の楽器屋さんで45を弾かせてもらいましたが、やっぱりもの足りませんでした。
    本来の音を取り戻して頂き、本当に感謝しています。
    大切に弾いて行きたいと思います。ありがとうございました。
    また、これを持って遊びに行きます!!

                          Fより

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  2. ありがとうございます。
    うれしいお言葉です。
    今日2010年1月7日までコメント管理わからず、いただいたコメントに気づきませんでした。
    申し訳ありません。
    そして
    ありがとう!ほんとありがとうございます。
    あの76はお宝ですね。
    生まれ変わるお手伝いできて僕も幸せです。
    また、是非ぜひ遊びに寄ってください。
    ありがとうございました。

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