こんにちは。北川木工です。
今回は、何度も何度もブリッジが剥がれ、トップがまるでアーチトップギターの様に浮き上がり変形し、ついには演奏不可とあきらめられて眠っていたGibson J-45 1995年製レフティの修理です。
何度かこのブログでもトップ浮き修理掲載していますが、今回のはハンパないです。
弦を張ってない状態でブリッジ左右各7mmの浮き。
ブリッジは剥がれかけています。
周りの塗装がめくれ、何度も貼りなおし修理した跡が見られます。
はがれの隙間はさほど広がってはいないのですが・・・
ブリッジが完全に前に倒れ斜めについています。
ブリッジ下部に至っては17mmの膨れ。
この45はアーチトップか?
スクレーパーを入れ、ブリッジをはがします。
ブリッジ周りの塗装が剥げていて何度も直した跡があります。
トップ浮きを修理しない限り、ボルトナットで止めても気休めで何度でも剥がれてきます。
何度ものはがれで傷ついた周りの塗装を修理します。
写真はラッカーを4回ほど塗り重ねたところです。
部分補修では完全に分からない様には出来ませんが、生木が見えているよりましです。
よく傷や塗装ハゲをそのまま放置されているギター見かけますが、木が露出していると、そこから湿度吸込み、長く放っておくとカビて黒くシミが出来ていきます。
幸いにもこのギターはケースに入れられ、除湿剤で保護されていたので無事でした。
一旦シミになったら、もう取れません。
剥がしたブリッジもかなり変形して、ねじれていたので特殊な方法で湿度と熱を与え、プレスして曲がり癖を取りベルトサンダーでフラットを出しました。
トップ板も膨らみを戻すため、湿度と熱でまっすぐに戻しました。
この作業を丁寧に時間かけてやらないと、無理にフラットに戻すと簡単にトップ板割ってしまいます。
トップ板曲がり癖取り、ブリッジのねじれも取り、ブリッジ周りの塗装も修理して、ブリッジ再接着。
もちろんブリッジの裏は前回に紹介しているプライヤリングという加工施し、強度出しています。
数十年ぶりにピシッとまっすぐになったボディ。
この45が再度歌える様になれると期待してくれているのが分かります。
でもまだよ。
軽く1音下げでチューニングしてみます。
それでもボディ浮き上がってきます。
全然強度足りていません。
ちゃんとボディ強度補強してからね。
もう少し待ってな。
ブレージングの剥がれを探ってみると、トップ2箇所、バック2箇所剥がれ見つかりました。
ボディが大きく変形しているギターはブレージングの剥がれ起こしているものが多いです。
強度足りずボディが変形し、それに耐えきれずブレージング、ブリッジ剥がれさらに変形していく。
悪循環です。
ついにはチューニングすら出来なくなり、お払い箱。
そんなかわいそうなギターいっぱいおるのです。
ブレージング剥がれ修理も終えこれで元々の強度、コンデションに戻ったわけです。
ここで初めてまともなチューニングしてみました。
2時間ほどチューニングしたまま置いておくと、左右で4mm程トップ浮き上がってきます。下方向でも7mm程浮き上がります。
この時点で弦高1弦12Fで3.1mm。
音は45の音ですが、サスティーンのないガシガシの張りつめた音です。
セットアップで弦高はもっと落とせますが、このコンデションで強度足りず壊れた訳ですから、さらに強度追加するべしと判断しました。
ボディ変形の場所、程度から判断し写真の様なブレージングを追加しました。
今回は割と太めでしっかり接着するモノが必要だったので、杢の細かい上質のシダーで軽い材を使用しました。
鳴り損ねずどころか追加以前よりうんと良く鳴る様になりました。
追加ブレージング貼付け、再度チューニングこれで許容範囲の強度が保たれました。
これでもギリギリです。
さて、セットアップ。
今回の修理代金を紹介します。
ブリッジ剥がし、矯正、再接着 8000
ブリッジ周り塗装 4000
トップ浮き、トップ板矯正修理 12000
ブレージング外れ4箇所 15000
フレット交換7本 7000
フレットすり合わせ 4000
全体調整、弦高下げ
サドルオクターブピッチ
ナット溝
ロッド 3500
新弦 500
計 54000
これで弦高1弦12F1.8mm 6弦2.3mmまで仕立てました。
取りに来て下さったオーナーの大工さんは、今までで一番良いコンデションで弾きやすく素晴らしくよく鳴っていると喜んで下さいました。
確かに良い音出ていました。
でもお約束。演奏後は必ずペグ半周、1音程弦緩めて下さい。
そうすれば生涯素晴らしいパートナーになってくれます。
無事復活!
良かったな。もう捨てられへんぞ! 可愛がってもらえよ。
めでたし。めでたし。
2010年4月13日火曜日
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