2010年2月19日金曜日

1986 Martin D-28 セル バイディング バインディング パーフリング 剥がれ 修理

こんにちは。
今回は少しビンテージMartin D-28のバイディング剥がれ修理を紹介します。

このギターはあちこちの楽器屋さんに修理断られ、こちらに持ち込まれました。
古いギターのバイディング修理は厄介です。
新しいバイディングに変えてしまうなら、まだやりやすいのですが、古いパーツをもう一度
付け直し再生するのはかなり厄介です。

その上・・・・

これ見てください。
接着剤がはみ出てるの見えますね。

これ瞬間接着剤なんです。

バックボディに指紋いっぱいついてますね。

これも瞬間接着剤です。

どこかの自称リペアマンに依頼してこのように
されてしまったらしいです。

アセったでしょうね。もうムチャクチャです。
私も出来れば断りたかった。

これからやる作業工程をシュミレートし、深いため息つきました。

やりましょう。 Martinさんが助けを求めています。

まず、バイディング、パーフリングを外していきます。
これらは、通常セル専用ボンドで接着されています。
私はセルボンという商品名のものを使っています。

このセルボンという接着剤は、ラッカーシンナーに容易に溶け、セルバイディングの表面を溶かし
癒着させて接着するという特性があります。

新しいものに変えるなら、トリマーを使って削り取ってしまえばすみますが古い味わい残したい
という当然の依頼のため、綺麗に使えるように剥がさなければなりません。
幸いにも劣化してあちこち剥がれているため、初めのきっかけを作らなくてすみ、まだましでした。

カッターナイフの先をラッカーシンナーに浸けバインディングとパーフリングの間に
潜り込ませ、ゆっくりボンド溶かしながら隙間広げ剥がして行きました。

ここで気をつけなければならないことは、
マーチンの塗装のセルロースラッカーも、簡単にラッカーシンナーに溶けてしまう事です。
ギター本体表面にシンナーが付かないよう細心の注意がいりました。

こうして、バインディング、パーフリングとも剥がしました。














セルボンで表面が溶けた断面はこんな様子です。


バインディングとパーフリングも同要領で剥がして
いきます。











さて、何とかバインディングもパーフリングも割らずばらせました。

次は、忌々しい瞬間接着剤の処理です。
瞬間接着剤はセルは軽くしか接着出来ないようです。
バインディング剥がれ修理しようとする方、気をつけてください。
ましてや、このような事になる前に相談して下さいね。

手作業で慎重に削りとるしかありません。
パーフリングの細い溝は大変でした。
本体傷つけぬよう、次のセルボンが確実に乗る
よう、削り過ぎて角度つかぬよう、カスが残らぬ
よう・・・
ふぅ~ です。






バックやサイドのあちこちについた指紋の瞬間接着剤も水研ぎペーパーの2000番、4000番、
コンパウンドと順にかけきれいに削り取りました。

バインディングとパーフリングにこびり付いているセルボンと瞬間接着剤も削り取らなければ
なりません。
前の接着剤が残っていると、そこに隙間ができ接着力が弱くまたすぐ剥がれます。


カッター、ノミを横摺りにして表に出ない
3面を綺麗にします。
表に出る面はビンテージ焼けで黄色く
変色しているので、これを傷つけないように
丁寧に作業します。
変色した部分を生かすために遠回りしているのですから。







さて、いよいよ最難関の貼付け作業です。

先ほども説明したように、マーチンのセルロースラッカーはシンナーがついてもセルボンが
ついても簡単に溶け塗装が剥げてしまいます。
はみ出た接着剤をシンナーで拭き取ることはおろか、接着剤をはみ出させることすら出来ません。

バインディング、パーフリングの接着はたっぷりセルボンを付けはみだしたのをシンナーついた
布で拭き取る、または乾いてからサンディングするのが常套手段ですが、
それは出来ないのです。
通常ギター作るときは、塗装前にバインディング付けるので削ったり、拭いたりできるのですが。

ですから、一気にセルボン塗り、バインディング貼り付けることは出来ません。


このような方法とりました。
なぜたっぷりセルボンつけるのかと言うと、
少量では木が吸いこんでしまい接着しないからです。

そのため、まず一度シンナーで溶かした薄いセルボンを塗り木に吸い込ませドライヤーで乾かし、次に原液を塗り指で押さえて接着しながら、少しずつ進んでいくという方法です。
パーフリングの幅2ミリ ここに細い筆でセルボンを
押さえてもはみ出ぬギリギリの量塗り、指で押さえて
接着しながら少しずつ進む。

これしかありませんでした。



ようやく一回りすると・・・・

足りん!!!
そうなんです。
長年経過したパーフリングは経年劣化で縮短く
なっているのです。










ジャンク部品取りに用意している古いギターから同じようなパーフリングさがし剥ぎとり、継ぎ足します。















バインディングも同じ要領で接着します。













当然こいつも短い。
また別のジャンクギターからバインディング剥ぎ
隙間ちょうどに切り加工して出来上がりです。











バインディングはこのように押さえながら進めました。

ふぅ~ ちかれた。
老眼の出だした目はしょぼしょぼ。
肩はパンパン。

下の写真がリペアのビフォーアフターです。
満足いく上がりです。

料金は25000円

でも、あんまりやりたくないです。