2010年11月10日水曜日

Tacoma パプース レギュラーEチューニング計画 ピックアップ取り付け

明けましておめでとうございます。
北川木工です。
昨年も多くのご依頼頂きありがとうございました。  

心から感謝です。
ありがとうございました。

昨年は246本のギター修理、調整させて頂きました。
一昨年に比べ、重症患者多く、沢山の勉強させて頂きました。

前回クーラー導入などと書いてから、はや3ヶ月。
久しぶりの更新です。

ご無沙汰の理由は、
ブログ更新する度に、お問い合わせメールやリペアご依頼、中古販売ギターのお問い合わせなどすごい量のメール、お電話を頂くことになり処理するのにかなりの時間がかかってしまい、許容範囲超えてしまいました

で、その後更新するのが怖くなってしまったのでした。

しかし、昨日このブログの関東の読者の方から「ご病気でもされているのですか?3月以上も更新ないので心配で電話しました。」とお電話いただきました。

ありがたいことです。

そうか~ 楽しみにしてくれてる人もいてくれてはるんや。
逃げてたらあかんな。
実際、ギター好きの人達の興味ある修理いっぱいさせてもらってるし、
やっぱり月一は更新していこう と新たに決意したのでした。

また、ぼちぼちですが  よろしくお願いいたします。





さて、今回はTacoma パプースをレギュラーEチューニングで使える様に、そしてピックアップ取り着けるという改造計画です。



このパプース、通常ギターの5カポAチューニングが本来のチューニングで、アルト、レキントギターの類のスチール弦仕様です。
押尾コータローさんのカノンで使われ一躍有名になりました。

かわいいです。
弦長485mm

このままノーマルEチューニングしてもべろべろでオクターブピッチも合わず、やっぱりアルトです。


テナーウクレレよりチョイ大きいこのサイズは、何処でも持って行くにはうってつけです。

ウクレレ持って外で遊ぶあの気軽さ。
ギターはなかなかそこまでの気楽さないですよね。

軽く山歩きして渓流の美しい場所に連れて行ったり、サーフィンのお供、キャンプのお供など、そんなウクレレみたいな持ち運びの良いギターあってもいいんじゃん!
マーチンのLMX, ベビーテーラー,ギグパッカー、その他使えるミニギターいっぱいありますが、担いで移動にはやはりデカイ。

アルトでも良いのですが、コード変換せなあかんし、やっとこ覚え出したテンションコードなど使えないし、やっぱりレギュラーEチューニングの出番が多いです。

今まで、ガットのアルトギターを5台程ノーマルチューニング仕様に改造し成功してきたのですが、皆お客様に気に入られて嫁に行ってしまっています。
やっぱりちゃんと使えるちびっ子いいですよ。 ふむ。

スチール6弦ならば更によいのでは?
スチール6弦のアルトなどパプースの他にあるかな?
カバキーニョ改造すれば・・・ とりあえずパプースで。

今まで手がけたガットアルトは弦長520~530mmでした。
こいつは485mm。

失敗でも戻せる様にやってみましょう!

まず、ミデアムゲージ張ってみます。
多少しっかりしたテンションになりますが、やはりピッチは音痴で音も太い弦で詰まってしまいます。

やっぱり、ちょっと改造やな。

と言っても、それ程大げさなな事をする訳でもないのです。
ようはオクターブピッチがしっかり取れるように、サドルを厚くして弦長を伸ばしテンション高めます。


これ、ノーマルのパプースのサドルです。
このサドルはまた元に戻したい時に使える様に取っておきます。
それにピッチ調整してあるので高さサイズ足りず、改造用には使えません。

まず、トラスロッド使ってネックをストレートよりちょい逆反りにセットします。
これはめいっぱい弦長長い状態を作り、テンションを上げるためです。

ノーマルサドル外し、これより少し高いめのサドル作ってブリッジピン側に山を付け(弦長が長くなるように)、ライトゲージでオクターブピッチ確認します。

大分近づいてますが、まだ全弦オクターブは高い音でサドルの幅が足りません。





オクターブピッチの確認方法は、各弦チューニング合わせ、開放と12F押さえた時の音が丁度1オクターブ違いになるかどうかを調べるのです。
12Fの音が低い時はサドルと弦の接点を前に、高い時は後ろに持って行きます。

先程作ったサドルは弦の接点がめいっぱい後ろにしてありますが、それでもまだ足りません。

そこでブリッジから上に出ているサドルにもう一枚牛骨を瞬間接着剤で貼りつけます。
本来ならば、サドル溝幅を広くして2枚分の厚みの牛骨をいれれば良いのですが、それではオリジナルに戻せません。
そのため、出ているサドルに貼り付ける様にします。
貼りつけてしまうと弦高調整で削るのが難しくなるので、この時点で弦高も適正に加工しておきます。

貼り付ける時はブリッジに瞬間接着剤がはみ出て付かないようにするため、ブリッジとの接点に鉛筆で印付け、外して接着します。

接着したサドルを取り付け、もう一度オクターブ確認します。
今度はオクターブピッチちゃんととれそうです。

鉛筆で印してある所が各弦のピッチポイントです。
この場所に弦が乗る様にヤスリで削り込んでいきます。











写真では弦との接点が良くわかりませんが、こんなサドルになりました。

これでライトゲージでレギュラーEチューニングでピッチもばっちりです。
試しに友人とセッションしてリードギター入れてもフレット音痴特有の気持ち悪い音ではありませんでした。

このサドル外してオリジナルサドル付けエキストラライト張ればAチューニングも使えます。

バッチリ使えています。     
ヘヘッ!!




ここまで使えるなら、やっぱりライブでも使えるようにしてやりたいのだ。
よっしゃ!ピックアップそうちゃ~く!!

この音からすると、イコライザー付きで手元で音作り出来るプリアンプ付きが欲しいな~。
しかし、ボディ厚があまりないので慎重に選ばなくては。

で、調べてみるとサイズ収まるのがありました。
Fishman Classic4
コンデンサマイク付きやチューナー付きはダメ。

さて、取り付けて行きます。

プリアンプ収めるのに必要な穴の大きさの型紙作ります。
この時点で中のライニング(トップ、バック板をサイドと接着するための糊しろのような材)の中に収まるかしっかり確認します。

型紙の外周を鉛筆で書きます。

























ドリルで大まかに外周の内側に穴を開け、引き回しノコ(先の細い特殊なノコです。)で切り取って行きます。















サイド板割れ止めとプリアンプ固定するビスをしっかり受ける為の材を貼り付け、ヤスリで削りこんできれいに処理していきます。
                              

                                                                                                                                                                                                                                                  
どうやって手の入らない所でピエゾ素子やエンドピンプラグを通すのかと言うと、写真の様にあらかじめ弦を通しておいて釣り上げていくのです。











こんな感じです。













ピエゾ素子が入る分、サドルを削る必要があります。

素子を入れる前にサドルに深さの印付けておき
いれた浮き分を削り落とし高さ合わせます。














ピックアップ組み上げてライトゲージ張り、完成です。

手元のイコライザーで音作りできるのでやっぱり正解です。
低音もズンと出て、ラインの音はとてもミニギターの音ではありません。

弦高も12F1弦1.6mm 6弦2.2mm
指板も広いので慣れると操作性すごく良いです。
弦長短いため、コード押さえるとき真上からきれいに押さえないと
少しでもチョーキング状態で押さえるとハイになってしまうため、
押弦の良い練習になります。

現在当工房で販売中!!

世界で1台?レギュラーチューニング出来るパプース!

傷はトップのピックガード回りに弾き傷、肘あたるあたりにひっかき傷あり。嫌な印象受ける様なものではありません。

オリジナルギグバッグ、オリジナルサドル付き

80000円で~す。 (1/17販売終了しました。 横浜T様お買い上げありがとうございました。)

パプースの音源アップします。使えるギターである事がわかると思います。
生音とエレアコ一人遊び入ってます。お相手はボスのループステーション、録音はSonyICレコーダ。
横の音源玉手箱から聴いてみて下さい。

2チャンネルでパプースはノーマルチューニング絶対出来ないなんて書き込みあったけど
ここにおまっせ!スペシャルチューン。

御興味あればお問い合わせ下さい。

今年も頑張ります!

よろしくお願いいたします。 ありがとうございます!!

2010年9月13日月曜日

Gibson LG-1 1965 細ネック プラスティック製ブリッジ ブリッジ制作 ブリッジプレート修理

こんにちは。北川木工です。
まだまだ暑い日が続いております。

家のプレハブ工房は38度Cを超え、このままでは身の危険を感じエアコン導入!!

友達にもらったウインドファン後ろから涼しい風あたる。

あぁ~ 幸せ。

ウィンドファンの後ろから出る更に暑い風は扇風機で野外に排出。

温暖化・・・ 

プチ幸せの裏に罪あり。
ごめんなさい。




さて今回は Gibson LG-1  細ネック 1965年製 プラスチックブリッジの修理模様です。

このギターはオーナーのバースイヤーギターで誕生日にヤフオクで購入されたらしいです。
楽しみに待ち、到着してみると・・・

で、修理に送られてきました。

豪快なアーチトップ!
ブリッジサイド左右6~7mm 下方向で6mm の浮き

プラスチックブリッジはねじれ変形し剥がれかけ、まともにチューニングしようとすると崩壊の危険を感じます。
勢い勇んでバースイヤーギター落としたのに、来てみてこれでは、さぞがっかりだったとお察しします。

ヤフオクご用心!
安い裏には何かある。








内部をマイクロスコープで覗いてみると、
ブリッジプレートはボロボロで訳のわからないでかいボルトが4つあります。
このでかいいボルトでプラスチックブリッジが固定されているのでしょうか?












マイクロスコープはブログでは初登場ですね。
今年の春ころに導入しました。
レンズの先にLEDライトが付いた優れものです。
今まで手探りでしかわからなかったものが目視出来ます。

割れの状態や、プレートの傷、ブレージング剥がれヒビなどすべて目視して確認できます。

これはもう手放せない優れものです。

*写真はTompson USAのトップ割れ修理時のものです。



プラスチックブリッジ剥がしました。
別にボルトでは固定されておらず熱をかけ、スクレーパーを入れると簡単に剥がれました。
あのボルトは以前に別のブリッジが付けられ固定されていた残骸のようです。
ブリッジ下トップ表面で削られていました。

しかしこのプラスチックブリッジちゃっちいです。
トイザラスに売ってるおもちゃギターの部品のようです。



このブリッジは1弦~6弦の弦間狭く(古いYamaha FGなどもそうです。)フィンガーピッキングでは指が入り辛いので新しいブリッジ作るにあたって弦間も広げる事にしました。
写真のジグプレートはJ-45の弦間です。
だいぶ狭いのが分かると思います。



良質のローズウッドで新しいアップベリーオーバーサイズブリッジを弦間広げて制作しました。

オーバーサイズにすると以前のブリッジはがれの傷が隠せ、振動媒体の面積増え、質量もあるので鳴りが太くなります。








ブリッジプレートの強化修理します。
写真はメープルの薄板です。
弦のボールエンドが傷を作る訳ですが、修理の方法として新たなプレートを貼り付ける方法と傷部分をリーマーという特殊な刃物で掘り、そこに埋木する方法があります。
今回は弦間広げるため、現状の穴をすべて埋め新しいブリッジ穴を開け直すため、強度の面からこの方法を選択しました。







プラスチックブリッジ剥がしたら、塗装の上からブリッジ貼り付けてありました。
プラスチックの接着材は塗装面との接着が相性よいのでしょうか?


ブリッジプレートを裏からクランピング接着し、元のピン穴、ボルト穴埋めたところです。











今回はローズのオーバーサイズブリッジを着けるため塗装を剥がします。











弦間広げた新しいブリッジを慎重に位置決めします。
弦落ちも考慮に入れて、ピッチも計り接着します。

この後、トップ浮きのブレージング追加し、サドル制作みっちり調整して、剥がれていたピックガードを貼りなおし完全に蘇りました。

残念ながら写真が無いのです。
My Pictureに入れるとき上書きしてしまったようです。

弦高12F 1弦2mm 6弦2.6mm 素晴らしく操作性良いビンテージギターになりました。

修理費用

トップ板膨らみ癖とり修理 5000
オーバーサイズアップベリーブリッジ制作 10000
張替え 7000
ブリッジプレート強化 4000
フレット擦り合わせ 4500
ブレージング追加 9000
サドル制作 4000
ナット下ローズスペーサ 2000
ピックガード貼りなおし、接着剤剥離 6500
新弦 500
全体調整 3500

計 56000円

でした。
ヤマト便で送らせていただいたオーナー様からメールが届きました。


北川様
いや~、もう想像以上でした。
最初、チューニングしている時はギスギスした新品っぽい?
感じがしばらく弾いてると音が鳴り出してきました!
最近は岸部眞明さんなどのフィンガースタイルを練習してるのですが
弦間も弦高もばっちりです。
でも自然にブルースっぽいコードを弾いてしまっています(笑)
小ぶりのボディでいつもスグそばに置いておけるギターとして
入手しましたがもう手放せません。同い年のこいつとはもう
一生付き合って行きたいと思います。
生き返らせていただいてほんと感謝いたします。
ありがとうございました。


嬉しいお便りありがとうございます。
ほんと良いLG-1になりました。

記念のバースイヤーギター末永く可愛がってあげて下さい。

ありがとうございます!!

2010年7月31日土曜日

Gibson 1937 バンジョー ネック折れ インレイ 塗装 修理


こんにちは。
北川木工です。

今回はネック折れ修理のレポートです。
1937年 Gibson バンジョー です。

見るからに高価です。
これはスペシャルな仕事しなければと正直ビビリます。

ネックだけで軽自動車新車買えるらしいです。



見てください。この薄さ、細さ! ロッドの小穴(木工用語で小穴と言いますが溝のことです)ついてあるのでさらに強度が保てません。



これはかなり細めの契
(ちぎり 木工用語で木と木を接合させる際、補強のためにうめ込む木 蝶型の物が一般的)
を数多く埋めこむ必要があります。

接着面積が少なく確実な接着力が必要で、クランピングに時間がかかるためタイトボンドを使い接着します。








確実に接合出来るようにありとあらゆる角度からクランピングします。

これだけのクランピングが必要でした。
かなりの時間かけてクランピング方法の検討が必要だったので膠では到底不可能でした。

添え木、ハタガネ、クランプ、萬力、ビニールテープ、養生・・・
ありとあらゆるモノを使い慎重に傷つけないよう確実に締める工夫します。




接着してクランピングしたまま2日放置。

接合部分に8枚の契り入れました。

マホガニーネックのため契の材は、マホガニー材に色目が近く、強度的にうんと強いカリン材で作りました。
カリンはエボニーやローズと同じく唐木系の材で縦繊維の引っ張り強度はマホガニー材など問題にならないくらい硬く強いです。
薄くても確実に保持します。





契の埋め込み深さや形状は、ロッドの小穴の深さや、割れの角度などあらゆる条件を満たすよう、それぞれが違います。
どうやって彫ったかって?
それは秘密。

ところどころ欠けてしまってる部分があります。






欠けてしまってるところにパテを埋め

余分なカリンを小刀で削り取ります。













綺麗にサンディングしてピースガン使いラッカー塗装していきます。

色はラッカー色付け用の顔料 赤、黒、黄色を混ぜ必要な色を作っていきます。
顔料を沢山入れると強度が極端に落ち、へたすると乾かなくなります。
私は8%以下で調合します。

何度も色を重ねて行きますが、度に微妙に色を変え、マホガニーの木目を描き、また塗り重ね納得行くように地道にやります。








職人仕事は急ぐとろくなことはありません。
行き当たりばったりや偶然は通用しません。
失敗したら終わりです。

やり直しや、修正のきく仕事ならまだ良いですが、やり直しのきかない一発勝負の仕事も多々あります。

慎重に色々な方向から問題解決に至るいくつもの道を考え、最適な道を選び、すべての工程をシュミレートし道具、材料揃え、それから自信持って大胆に行動する。
それが一番の早道であり鉄則です。




余談ですが、私は25年以上木の仕事に携わり、工芸、家具、漆螺鈿、文化財修復など興味のある木の仕事にのめり込んできました。
その中でもこのギターリペアの仕事は私のなかで、第1級の難しさと興奮とやりがいを与えてくれます。
現在も木工、漆の仕事も沢山依頼されますが、それらの仕事は信頼できる良い職人仲間や弟子に委托して、ギターリペア1本にのめり込んでいます。

今まで経験し、得た知識のすべてを駆使して、尚且つ新しい知識と技を模索し追求出来る素晴らしい仕事です。

ほんと幸せです。

すいません。つい興奮してしまいました。

これくらい演奏もできればな~。
まだまだ先は長い。  楽しみましょう!
















欠損している白蝶貝も入れ、ヘッドプレートの亀裂も修復して完成しました。

よ~く見ても折れた形跡も契の跡も分かりません。









この修理の依頼は、滋賀の八日市にある くらま楽器 http://www.kuramainst.com/index.html
様の依頼です。
オーナーの吉田悟士氏はバンジョー、ギター、マンドリンなど演奏の達人で数々のコンテストで賞を取られ、ブルーグラスの聖地と呼ばれている楽器店です。
ビンテージ楽器の知識も深く、楽器業界も詳しく、わからないことは何でも聞いちゃいます。
信頼し、尊敬している師匠です。

そんな方から、ええ出来や!Gibsonカスタムショップなみの仕事や!と太鼓判頂き 嬉しかったです。

最近、吉田さんとGibsonカスタムショップのフレット交換の技について探り、研究して、スペシャルなフレット交換もやり終えました。
通常のフレット交換とは違う技身に付けました!

次はそんなフレット交換のレポートをアップします。

ありがとうございます。

2010年5月28日金曜日

Guild JF55-12 1995 トップ浮き ブリッジ剥がれ オーバーサイズブリッジ制作 ネック元起き

こんにちは。 北川木工です。

今回は劇的な変身をとげたGuild JF55-12 1995 の修理記録です。

ご依頼は1本のメールから始まりました。

北川木工 殿
突然のメールで失礼申し上げます。
神奈川oo市在住のooと申します。
御社のホームページ、ブログを大変楽しく拝見させていただいております。
私はアコースティックギターを弾き始めてすでに40年以上となり、
まだまだ学生時代のバンド仲間を集めては懐かしいアメリカンフォークを
楽しんでおりますが、このたび御社のギター修理に大変興味を惹かれまして
是非ご相談を!と思いメールを差し上げました。
私はマーチン、ギブソン他数台のギターを所持しておりますが、その中の
ギルド(JF-55、95年頃)の12弦についてのご相談です。
このギルドは「12弦といえばギルド、ギルドといえば12弦!」との憧れをもって
永年愛用しておりますが、ブリッジ剥がれを繰り返しております。
トップもハッキリわかるほど膨らんでおり、弦高を下げるためサドルは
限界まで下げております。
いままで何箇所かのリペアーショップに出しておりますが(4回目)いまだにサドルが
剥がれます。
先月も最後の頼みと思って、有名な某リペアーショップに出しましたが「トップの膨らみ
は治せず、ネックリセットで対応するしかない。ブリッジの剥がれはボルトで固定する。」
とのことでした。
ネック起きは確かに若干はありますが、ネックリセットは最後の手段として、アイロンで
治れば思っております。またブリッジをボルトで固定してもはトップの膨らみを
治さないと弾きにくさや音量の改善にはつながらないのでは?と思います。
それに、なんといっても修理価格が20万近く(これで完璧に治ればいいのですが・・)
もう少し他の方法は・・・と考えております。
(ブリッジの再接着だけお願いしてで帰ってきましたが、もう端のほうは
剥がれてるようで・・・)
北川様のブログにありましたギルドF112と全く同じ状態ですが「膨らみを抑える
為にブレーシングを追加する」というのは非常に興味をそそられました。
(木と付き合って25年!と言うのも感心いたしました)
是非一度診ていただきたいと思っておりますが、最終的には総合調整という
形になるんでしょうが、トップ浮き修理、ネックアイロン、ブリッジ再接着、フレット
すり合わせ等でおおよそいくら位の価格となるでしょうか?
(特に修理費にこだわっているわけではないのですが・・・)
また修理に出す場合、順番は何日くらいお待ちすればよいのでしょうか?
(前は1年以上待ちましたが・・・)
突然のメールで大変ぶしつけではありますが、宜しくお願い申し上げます。


コピペさせていただきました。


これから何本かメールのやり取りをして送られてきました。



ものすごく美しい個体です。
本当に大切に可愛がられてきたやつだと感じました。












左右均等に膨らみ具合調べて弦緩めて6.5mmの浮きがあります。
表面板は変形癖がついています。

ちょっと特殊な加工でぴしっとまっすぐに伸ばしてやる必要があります。

弦高はチューニングして、1弦12F2.9mm
12弦でこの弦高では、私には弾けません。










ブリッジも剥がれかけています。
トップ浮きの歪みに耐えられず何度も剥がれて修理された跡があります。
美しい個体だけにその傷が痛々しいです。

その上、弦高下げるためにブリッジが削られています。
お世辞にも上手い削り修理とは言えません。
エボニーブリッジくすみ、仕上げでこぼこで可哀想です。





まず始めに、ネックの元起き修理からスタートです。

何度も書いていますがこれが効くかどうかで修理内容が完全に変わります。

私どもの工房ではネックアイロン修理に1週間ほどかけます。

それくらいかけないと判断出来ないからです。

料金は1回目5000円成功報酬です。

この個体は2度の矯正(料金8000円)でいい感じに寝てくれました。
さてさて、かなりのモノに上がりそうです。
ワクワクします。



















アイロン成功したので、ブリッジは薄い必要はなく、ブリッジ回りの傷痛々しく薄く削られ醜い状態だったので、オーナーと相談しエボニーでオーバーサイズブリッジを作りました。
どっしりと良い音になるはずです。
オリジナルにこだわら無ければ(もう削られてオリジナルではなくなっていますが)剥がれ傷塗装修理する手間考えれば、音にも見栄えもこちらのほうが得策です。


もちろんブリッジ裏はプライヤリング加工して接着面積を大きくし接着剤の食いつきを良くします。






この個体の膨らみにはこの2本のブレージングを追加しました。

結果トップ浮きは左右で3mm程に治まり、サウンドホール回りのヘコミも解消されました。

後は念入りに最終調整。

修理後弦高は1弦12F1.3mm
これなら気持ちよくいつまででも弾いていられます。





修理内容とご請求額 (12弦の場合6弦よりも高くなる加工があります。)

ネック元起きアイロン修正2回         8000
表面板伸ばし癖取り加工            5000
ブレージング追加2本              8000
12弦ブリッジ制作                12000
ブリッジ剥がし貼付け              8000
サドル制作                    4000
フレットすり合わせ(ステンレス)        6500
全体調整(オクターブ、弦高下げ一式)   7000
 
                      計  ¥58500


すばらしい鳴りに変わりました。
さすがに12弦はギルドと言われる音!

音源アップします。
演奏はバンドメンツのスーさん。
僕も横で邪魔してしまっています。まっ ご愛嬌。ゆるひて。

ほんでもって、こんなに嬉しいメール頂きました。ぶひひっ!


北川 様
ギルド到着しました、感激の一言です!!
イヤ~最高の仕上がりですね~。
重厚な新しいブリッジ、元起きやトップのふくらみがないと言うことは
こんなに弾きやすいものか!
それに加えて低音部の腹に響いた鳴り!そして全体のギルドらしい
カーンとした音! まさに求めていた音がよみがえりました!
本当にありがとうございました。
また、今まで色々なギターをあちこちのリペアーショップに出しておりますが
北川様の丁寧な仕上げに驚いております。
今まで完成して返ってきたギターが汚いまんまや、あちこちキズだらけだったり
したものが結構多く、これもリペアー作業上は止むを得ないのかな~?
なんて思ったりもしておりました。
本当に綺麗で感激しております。
更に安い!!!
期待どおりに直らないで10万以上なんて~のもありまして・・・
とにかく最高の状態に仕上げていただき、感謝・カンシャの気持ちで
一杯です。 
最高の愛器として、これからも更に大切に末永く弾き続けていく
つもりです。
ついでに一つ質問ですが、現在張ってあるのはマーチン弦ですよね?
普通は私はダダリオのライトを使用しているのですが、ロッドは暫らく
このままいじらないでおいてもいいでしょうか?
今後また何か判らないことがあれば是非ご相談にのっていただきたく
宜しく御願いします。
本当にありがとうございました。

へへへいっ! この仕事しててホント良かった!!

ありがとうございます。

2010年4月13日火曜日

1995 Gibson J-45 レフティ トップ浮き top変形 ブリッジ剥がれ ブレージング剥がれ フレット交換 修理

こんにちは。北川木工です。
今回は、何度も何度もブリッジが剥がれ、トップがまるでアーチトップギターの様に浮き上がり変形し、ついには演奏不可とあきらめられて眠っていたGibson J-45 1995年製レフティの修理です。







何度かこのブログでもトップ浮き修理掲載していますが、今回のはハンパないです。















弦を張ってない状態でブリッジ左右各7mmの浮き。
















ブリッジは剥がれかけています。
周りの塗装がめくれ、何度も貼りなおし修理した跡が見られます。

はがれの隙間はさほど広がってはいないのですが・・・








ブリッジが完全に前に倒れ斜めについています。


ブリッジ下部に至っては17mmの膨れ。
この45はアーチトップか?














スクレーパーを入れ、ブリッジをはがします。

ブリッジ周りの塗装が剥げていて何度も直した跡があります。

トップ浮きを修理しない限り、ボルトナットで止めても気休めで何度でも剥がれてきます。









何度ものはがれで傷ついた周りの塗装を修理します。
写真はラッカーを4回ほど塗り重ねたところです。

部分補修では完全に分からない様には出来ませんが、生木が見えているよりましです。







よく傷や塗装ハゲをそのまま放置されているギター見かけますが、木が露出していると、そこから湿度吸込み、長く放っておくとカビて黒くシミが出来ていきます。
幸いにもこのギターはケースに入れられ、除湿剤で保護されていたので無事でした。
一旦シミになったら、もう取れません。

剥がしたブリッジもかなり変形して、ねじれていたので特殊な方法で湿度と熱を与え、プレスして曲がり癖を取りベルトサンダーでフラットを出しました。

トップ板も膨らみを戻すため、湿度と熱でまっすぐに戻しました。
この作業を丁寧に時間かけてやらないと、無理にフラットに戻すと簡単にトップ板割ってしまいます。




トップ板曲がり癖取り、ブリッジのねじれも取り、ブリッジ周りの塗装も修理して、ブリッジ再接着。

もちろんブリッジの裏は前回に紹介しているプライヤリングという加工施し、強度出しています。

数十年ぶりにピシッとまっすぐになったボディ。
この45が再度歌える様になれると期待してくれているのが分かります。







でもまだよ。

軽く1音下げでチューニングしてみます。
それでもボディ浮き上がってきます。
全然強度足りていません。

ちゃんとボディ強度補強してからね。
もう少し待ってな。










ブレージングの剥がれを探ってみると、トップ2箇所、バック2箇所剥がれ見つかりました。

ボディが大きく変形しているギターはブレージングの剥がれ起こしているものが多いです。

強度足りずボディが変形し、それに耐えきれずブレージング、ブリッジ剥がれさらに変形していく。
悪循環です。
ついにはチューニングすら出来なくなり、お払い箱。

そんなかわいそうなギターいっぱいおるのです。



ブレージング剥がれ修理も終えこれで元々の強度、コンデションに戻ったわけです。
ここで初めてまともなチューニングしてみました。

2時間ほどチューニングしたまま置いておくと、左右で4mm程トップ浮き上がってきます。下方向でも7mm程浮き上がります。
この時点で弦高1弦12Fで3.1mm。
音は45の音ですが、サスティーンのないガシガシの張りつめた音です。

セットアップで弦高はもっと落とせますが、このコンデションで強度足りず壊れた訳ですから、さらに強度追加するべしと判断しました。




ボディ変形の場所、程度から判断し写真の様なブレージングを追加しました。
今回は割と太めでしっかり接着するモノが必要だったので、杢の細かい上質のシダーで軽い材を使用しました。
鳴り損ねずどころか追加以前よりうんと良く鳴る様になりました。
















追加ブレージング貼付け、再度チューニングこれで許容範囲の強度が保たれました。
これでもギリギリです。

さて、セットアップ。












今回の修理代金を紹介します。

ブリッジ剥がし、矯正、再接着        8000
ブリッジ周り塗装                4000
トップ浮き、トップ板矯正修理        12000
ブレージング外れ4箇所           15000
フレット交換7本                7000
フレットすり合わせ               4000
全体調整、弦高下げ 
    サドルオクターブピッチ
    ナット溝
    ロッド                   3500
新弦                        500

                 計       54000

これで弦高1弦12F1.8mm 6弦2.3mmまで仕立てました。

取りに来て下さったオーナーの大工さんは、今までで一番良いコンデションで弾きやすく素晴らしくよく鳴っていると喜んで下さいました。
確かに良い音出ていました。

でもお約束。演奏後は必ずペグ半周、1音程弦緩めて下さい。
そうすれば生涯素晴らしいパートナーになってくれます。

無事復活!
良かったな。もう捨てられへんぞ! 可愛がってもらえよ。
めでたし。めでたし。